沈黙

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『私の息子だ』 『だからと言って、このような酷い事を』 誰? 何故泣いてる? 『ヒロシ、サトシ、逃げるのです』 逃げる? 何処に? 『逃がしはしない』 ヒロシはハッと眼を開け勢い良く飛び起きた 「はぁはぁ…いっでぇぇぇ」 と踞る 視線を感じ横を見ると小さな女の子が震えて立って居た 「誰だ?お前」 少女はビクッと跳ねあがり 「お、お姉ちゃん!」 と叫びながら走って行ってしまった 足音がバタバタとし 「良かったぁ、気が付いたんだね」 ヒロシと同じくらいの少女が笑顔で言った ヒロシは、しばしキョトンとしていたが 「ここは何処だ?」 と口を開いた瞬間にフラッシュバックがヒロシの頭の中に起こった 第三ブロックに最下級層の入口が開けられサトシが落とされた俺が受け止めジルにサトシを投げ飛ばした…俺はそのまま穴に落ちた… 「…最下級層」 「そうじゃ、ここは最下級層のヤクソンだ」 「おじいちゃん」 白髪頭に白髭をはやした老人が入って来た 鋭くヒロシを見る 「ナータ、この人の服と荷物を持って来なさい」 ヒロシと同じくらいの少女が取りに出て行った 「何があったかは詮索はせんが、お前は此処に居てはならない者らしいな」 静かに、しかし鋭く言う老人に 「はい、絶対に居てはならない者です」 とヒロシは言った、ナータがヒロシの服と荷物を持って来た 「帝国軍特殊部隊か」 「はい」 ヒロシはグッと拳を握る 「地下都市第三ブロックで反乱軍と戦闘中に反乱軍の術師が開けた入口に落ちました」 「随分とマヌケだな」 「うっ…仕方ねぇだろう、落とされたのを助けるのに夢中だったんだから」 ギロッと睨まれ 「す、すいません」 と慌てて謝る 「第三ブロックから落ちて良く無事だったものじゃ」 老人は何やら箱を出した 「包帯を取り替える」 「うげっ」 ヒロシは青ざめた 「まったく、何なんじゃ!」 「すいません」 ヒロシの頭にはコブが出来ていた 大暴れの末やっと治療が終わったのだ 少女が二人笑っていた 「傷が癒えたら地上までの道まで案内する、それまでは、かくまってやろう」 「ありがとうございます」 「世界を救う〈銀色の狼〉を邪険には出来ぬからな」 ヒロシは顔を上げ老人を見る
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