始まり To 終わり

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 30秒ほどで全身が覆われると、液体は細胞に侵入し、核を犯した。砕いた核の残骸を吸収し、液体は次に自らが核となった。  体毛が全て抜け落ち、骨格筋も縮小した。手足は細長い物になった。次に、頭が肥大し、目は顔のほとんどを占める大きさになった。鼻は孔だけが残り、口も唇が無くなって大きさも小さくなった。  完成した姿は、グレイ型である。 「こんにちは、先祖の皆さん」  グレイ型はヨロヨロと立ち上がり、言葉を失っている研究者たちに声をかけた。  目の前で起きたことに理解が追い付かない研究者たちは、何も言わなかったが、グレイ型は尚も続ける。 「ボクは10億年後の地球から来た“人間”です」  研究者たちは、それを聞いて、さらに言葉を失った。自分たちの子孫が宇宙人と思われてきたグレイ型だったのである。 「10億年後の地球は、温暖化で世界中の氷が解け、大半が海に沈みました。生物は環境に合うように進化し、ボクみたいな姿になりました」  グレイ型はここで一度言葉を切り、研究者たちが話についてきているかを確認した。突拍子もない話ではあるが、徐々に事態を把握してきた研究者たちは、グレイ型の話に意識を向けた。 「泳いだり他の生物から身を守るために、身体は液体金属になった。歩く必要は極端に少ないから骨格筋は必要最低限まで減少し、逆に知能をつけるために頭が大きくなった。もともと陸上にいた人間は、暗い海では不利だと大きくてフィルターのついた目になった」  再び間を開けると、グレイ型はニヤッと笑い、研究者たちに手を差し出した。 「つまりボクは未来人。材料がないから出来ないけど、科学力は君たちよりも遙かにある。ボクに生活する環境をくれたら、君たちの研究に手を貸そう」
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