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「? じゃあ、お前がいた頃は?」
話の先が読めないキーンズは、床に置いてあったエタニーのグラスと、飲み干したあとに弄っていた自分のグラスを、近くのテーブルに置いた。
エタニーのところまで戻ると、再び横に座って、エタニーの話を聞き始めた。
「ボクが住んでた頃は……、人類は絶滅に瀕していた」
「なっ……ッ!?」
キーンズは、エタニーの話を信じられず、何か言いたくなったが、言葉が出ず口をパクパクさせるだけだった。
エタニーは、そんなキーンズを知ってか知らずか、話を続ける。
「進化したのは、人類だけじゃなかったんだ。植物も泳ぐようになり、魚はもちろん、動物は殆どが水生になった。知識と液体になることだけが取り柄だった人類は、自然の猛威には歯が立たなかった」
淡々と語るエタニーだったが、声のトーンは低く、パーティーの明るい雰囲気から、二人だけが浮いていた。
「じゃ、じゃあ何でお前は、この時代にやってきたんだ? というか、そんな状況で、どうやってタイムマシンなんか……」
「ボクがこの時間に来たのは、未来を変えるため。ボクのいた時間で失敗していた他の惑星への移住を成功させ、未来を救うためだ! 未来に帰らなくてもいい。もとよりボクは、この時間で果てるつもりだ!」
エタニーの叫びは、盛り上がった会場でかかり始めたロックミュージックの音にかき消され、キーンズにしか聞こえなかった。
「でもさ、この話はみんなにしないでね? 変に同情されるのは嫌だし」
「あぁ、分かった……」
普段はやんちゃで、口の悪いエタニーがしおらしく見えたキーンズは、そう答えるしかなかった。
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