始まり To 終わり

8/12
前へ
/14ページ
次へ
 次の日から、実際にシャトルを飛ばす計画が練られ始めた。  プロジェクトのメンバーは120人。長官からの指示で集められた精鋭だった。その中には、キーンズとエタニーの姿もある。 「では、目標は来月だ。以前から、エタニー・プロジェクトと並行して進めていた発射に組み合わせるだけだ。必ず準備しろ」  チームリーダーのハンスが会議室で力強く言い、持ち場へと戻った。  メンバーも各々の持ち場へ戻り、エタニーの指示のもと、作業を始めた。  順調に進んでいく、エタニー・プロジェクト。「当たり前だろ? ボクが仲間にいるんだぞ」と言うエタニーも、自分とキーンズしか知らない真の計画を進められることが出来て、うれしそうにする。  キーンズは、そんなエタニーを不安そうに見つめていた。  思い起こされるのは、「自分はこの時間で果てる」というエタニーの言葉だった。何とかして、エタニーを未来へ送り出せないか、と一人悩むのだった。 「ボクを未来に返そうとしても無駄だよ」 「ははっ……バレてたか。なんでだ?」 「だって、未来を変えるってことは、ボクの存在を消すことになるんだからね」  言われて気づいた。キーンズは、顔から血の気が引くのを感じた。 「なんだと!? そんなこと聞いちゃあ、こんな計画やってられるか!」  書類を床に叩き付け、キーンズは部屋から出ようとしたが、エタニーに呼び止められた。 「お前は、一人のために、未来の人類を見殺しにするのかッ!?」  それを無視して、部屋を出たキーンズだったが、出たところでハンスに肩を掴まれ、壁に叩き付けられた。 「お前の気持ちは分かる。だが、我々の義務は宇宙の研究であって、おまけで未来を救うんだ。頭を冷やして、仕事に戻れ!」  ハンスは中に戻った。行き場のない虚無感に、キーンズは座り込むしかなかった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加