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いよいよ、シャトル発射の前日になった。しかし、午後8時ごろ、最終点検中に問題が発覚した。
機材の一つが無くなっていたのだ。一つの油断が、命をも奪う宇宙。全員が血眼になって捜索をした。
一方で、キーンズは部屋に引きこもり、枕を抱きしめる日が続いていた。しかし、外が騒がしいと気付き、廊下に出て、近くにいたハンスに事情を訊いた。
「動力部のエタニーが作ったエンジンみたいなやつが無くなったんだ!」
「なんだって!?(一番複雑で、エタニーしか作れないし、直せないから、あいつが『絶対に壊れないよう作った』って、一か月以上時間を費やした部品だぞ!?)」
「まさか、未来を捨てるとか言って、お前が!」
「ち、違う! 本当だ、信じてくれ!」
胸倉をつかまれ、持ち上げられそうになるキーンズだったが、必死の弁解のおかげで疑いが晴れた。
「いいか。お前も探せよ!」
ハンスは走り去った。
キーンズも、今までの葛藤は何処へやら。着の身着のまま、探索にあたった。
打ち上げ当日。この日になっても、部品は見つからなかった。
発射時刻は午後六時三〇分。今は五時四十一分だ。
昨日から無休で探すメンバーは、疲労が溜まり、さらに今までの苦労の反発のせいもあって、ダウンする者が多くなってきた。
もうダメかもしれない。密かに首をもたげた不安が、心に巣を作り始めた。
だが、ハンスに励まされ、メンバーだけでなく発射を担当するグループのメンバーや、手の空いた研究員なども捜索に加わった。
八時三五分。ついに、前日の昼食から朝食も食べず働くメンバーで、倒れる者が出始めた。
ここまでなのか……。諦めかけるメンバーにキーンズが叫んだ。
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