プロローグ

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あの忌々しい日から、今日で一年がたつ。 俺が、いや、この街の全ての子どもが、いきなり親を失ったあの日。 あんなことがなければ、今俺が横たわっているのも固いステージの上じゃなく、フカフカのベッドだっただろう。 握られているのも、重々しい黒樫の木刀ではなく、友達のアドレスが大量に入ったケータイだっただろう。 「父さん、母さん。この一年で、外の世界はどうなった?」 長らく会えていない両親を思いながら、ポツリと呟く。 「大紀さん、準備ができました」 仲間が呼んでいる。 「今行く」 俺はその手の木刀をしっかり握りしめ、体育館を後にした。
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