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男が座らされている。
自身をかこむように複数の男達に時折蹴られながら悲鳴をあげていた。
複数の男達の中心には俺の親父がいる。そして俺の母親も……。
しかし母は座らされた男の隣で同じように父に殴られ続けている。
そんな母から出される悲鳴は人が出すような音では無く、例えるならば金属が強く擦れあうような、もしくは車に潰される鳥があげる最後の鳴き声のようであった。
その光景を俺は淡々と傍観している。 おそらくその時も同じようにしていたんだろう。
目の前で起きている惨劇を無邪気な視線で夢か現実かわからないまま見ていたのだ…………。
やがて父が何度目かに母を殴りつけた後に何かを持たせようとした。
それは黒く、重厚な作りでよくテレビの刑事物に出ているのを見ている代物だった。
父は母にそれを持たせたまま、男のこめかみにつけて殺せと命令している。
母がイヤイヤと首を横に振るが、その度に部屋の中には鈍い音が響き渡っていた。
大好きな母さんが困っている。
「僕がやる!」
そう言って揉み合っている二人の間に入って指先で引き金を引いた。
「夢か…」
妙にリアルな夢だった。
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