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場所は生まれた時から住んでいる自分の家の居間で、鉄の塊の重さも意外に軽い引き金の感触も全てがリアルに思いだせてしまうほどだ。
まったく…久しぶりに帰ってきたっていうのに…。
普段は夢など見ない自分がよりによってどうしてあんなモノを見てしまったんだろう。
いや、今…だからこそか。
一度溜め息をはきだす。
父が無くなったという知らせを母から聞いたのは一昨日の夜のことだった。
すぐに直接の上司に連絡し、その後には必要と思われる物を車に詰め込んで、故郷へと帰ってきたのだ。
そしてそのまま寝ずに葬式の準備に追われ、客人が帰った後の居間に布団をしいて寝たのが深夜二時過ぎだった。
「あら…もう起きてたの?早く布団をたたんでちょうだい、すぐにお客さんがいらっしゃるんだから」
昔と変わらない快活な言葉には泣き叫んでいた母の面影は無い。
やはりあれは夢だったんだろう。
よくよく考えてみれば父は若い時は血気盛んだったらしいのだが、自分が物心ついた頃には大分丸くなっていて父があんな風に怒っている姿など見たことない。
母に促されて俺は手早く布団を片付け……ようとしたところであることに気づいた。
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