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「母さん…聞きたいことがあるんだけど?」
「うん…どうしたの?」
居間でいつものように 母は答えてくれる。
「母さんが昔…その…俺を置いて家出をしたときの話なんだけど…」
「誰から聞いたの…そんなこと!」
激昂する母を抑えて俺はもっとも聞きたかったことを質問する。
「一体…あの日に何があったんだ?」
自分のこの質問の仕方では母に何が?という反問がされるだろうが母はそれだけを聞いて、
「何も…何も…無かったわ」
それだけで母が何かを隠していることが長年一緒に過ごした経験でわかってしまった。
母親が息子を知っているように
息子もまた母を知っているのだ。
そして…俺は核心をつく質問をつむぐ。
もし母がさきほどの質問に笑ったり、問い返してきたならばこれは聞くつもりはなかった…だが…あの夢が…父の弔問に来る人が…そしてあのお喋りな近所のおばさんが最後にポツリと呟いた一言が俺に真実を知りたいという気持ちを後押しする。
「母さん…あの男の人をやったのは誰なんだい?」
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