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「…誰も撃ってなんかいないわ」
やはり…そうだったのか…。
いまとなってはあのお喋りなおばさんに感謝すべきなのか余計なことを言ってと思うべきなのかわからない。
『そういえば長治さんが真面目になったのもそれからだったわね』
その一言が無ければ、俺はあえて母に問いかけはしなかっただろう。
「世の中は何が幸いするかわからないわ。それに…今更考えてもしょうがないことよ」
そう言って母は例の一つだけ色の違う床板を見つめている。
俺もまた同じようにその場所を見続けていた。
父は何故真面目になったのか?
それは贖罪のためなのか?
もしそうだとしたらそれは誰に向けられた贖罪なのか?
父が死んだいまとなっては永久に知ることは出来ない。
線香の香りがフワリと辺りを包んでいた……。
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