『例外人間』

2/9
前へ
/103ページ
次へ
梅雨は憂鬱だ。気分が悪くなる。 この国の人間なら、誰でもそうなんじゃないかな。僕も今そう思ってたところだ。 でも、僕が今気分が悪いのは、そのせいだけではない。僕、早瀬純は、友達の一人も作れないまま、夏休みを迎えてしまった。 おかげで勉強三昧。やることもないし。まあ明日からは、少し羽目外そうかな。 「外の雨、どうなってるかなぁ…。」 僕は驚いた。土砂降りの雨にではなく、外から入りこんできた、一人の少女に。 「ぷはぁー!もーやだ。ずぶ濡れよぉ!」 「あの…ええ…?どちらさま?」 「ああ。ごめんなさい。私は…ううん…」 僕はその子の容姿に見惚れた。ショートのピンクの髪、光る緑の目、透き通る様な肌。全てが美しい。何だか、ベレー帽のような変な帽子をかぶっているが、その点を差し引いても、かなりいい。 「あ…あの…前とか…隠した方が…」 「ほぇ?」 僕の眼前の女の子の胸は、雨のせいで透けていた。僕は初心だから。こういうのは慣れてない。 「あー。ごめんね。こういうのは、見せない方がいいんだよね。」 何て恥じらいのないことか。まあ実際、その性格は、僕にとってなんら有利にはたらかないが。 「でも、期待してた人とはちょっと違うみたい…。」 その子は、僕の顔を覗き込むなり、意味のわからない言葉を吐いた。 「指令では、『もしも、頼れる主人公に会ったら』なのに…。」 「え?」
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加