Episode 3. たまには喧嘩くらい

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(佐久間 side) 「やっべ、遅刻する!」 どうも、佐久間です。 軽く言い訳しつつ現状を説明させてもらうと。 俺は、今まで取材に行っていて。時間を忘れてしまうほど興味深い話を聞かせて頂けて充実した気分で移動の車に乗り込んだ。ただふと時計を見ると次の仕事まで、ギリギリの時間……。 とまぁ長々と話しましたが、纏めると、ガチで遅刻しそうです! さすがに全員での撮影に遅刻はマズいから、移動の車の中から焦りっぱなしで、駐車場に着いた瞬間から、猛ダッシュ。 いい加減肺が悲鳴をあげ始めた頃、俺らのグループ名が書かれた紙が貼られた部屋が目に入って、少し安堵。 ところが。 (…さっきまであんなに充実してに、俺、今日アンラッキーなの…?) 楽屋に近付けば、近付くほど、嫌な予感がわいてくる。 …だって、イチと松連の泣き出しそうな声が聞こえきてるし。 これは、明らかにヤバい状態なワケでしょ?! きっと光くん達もその場に居るんだろうけど、鷹揚に構えてそうだし。 (……よしっ!) 「…おはよーございまーす……。」 嫌な緊張感を感じながら、控えめに声をかけて、楽屋に入る。 「っ、もういいっ…! 俺だって琥珀なんか、き、嫌いだもん!」 「…っ、俺だって、嫌いです。」 今日の俺はトコトン不運のようで、俺が恐る恐る楽屋入りしたときに双子達の喧嘩はピークをむかえたみたいだ。 まぁ喧嘩っつっても、手ぇ出すとか暴言を吐きまくるっていうタイプじゃなく、お互いに好きなんだけど、寂しくてつい思ってもいないことを言ってしまう…… そう、いうなれば、バカップルの痴話喧嘩のようなモノで。 ただ、コイツらが喧嘩することなんてないから、少しばかり悩んでしまう。 「「っ、うおっ?!」」 その瞬間。 いきなりギュムッと身体にかかった圧力に、俺と光くんの悲鳴が重なった。 「松連…どうした?」 「イチぃ…?」 松連が俺に、そしてイチが光くんに勢いよく抱き付いたのだ。 (こんな時までやることが同じなんて、さすが双子…なんて考えた俺はさすがに不謹慎か??) もう仕方ないから。 普段は頼りない“お父さん”と“お母さん”だけど、こんなときくらい、とろけてしまいそうなくらい優しさとあったかさでふたりを包んで、意地になって閉ざしてしまった心を開く手伝いをしないとな~と松連の頭をくしゃりと撫でながら考える。  
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