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「ふぐぐっ…!!」
本の数センチ離れた場所から落ちていたら…確実に死んでいただろう。
偶然にも落ちた場所の壁が老朽化して飛び出ていた鉄の棒に掴まることで助かったのだ。
この女…何たる強運の持ち主…。
しかし、久しぶりに肝が冷えたな。
冷静にその場の状況を確認していると、女生徒と俺の視線が合う。
俺は、女生徒に軽く会釈してからその場から立ち去ろうとした。
っていうか、よくよく考えれば俺は何もしていない…無実ではないか…。
「…俺としたことが、情けない」
「ちょっ、ちょっと!? どこに行く気!? 助けなさいよ!?」
すると、突然…自殺志願者の女生徒が俺に助けを求めてきた。
背後からの声に反応し、振り向いてもう一度その女生徒の姿を見ると…
何故だか知らないが、俺は無性にある台詞が言いたくなり、たまらずこう言ってやったのさ。
「逝ってらっしゃいませ」っと
変な充足感を感じながら、俺は再び立ち去る。
「この人でなし! アンタそれでも人間なの!?」
珍しいくらい良い気分に浸っていると、突然声を張り上げて罵声を浴びせてくる。
なっ…何なんだ…この女?
俺は…ただ、自殺の邪魔をしない為に気を利かせて立ち去ろうとしただけなのに…何か癇に触ることでもしてしまったか?
「…貴様、死ぬ気だったんじゃないのか?」
俺は読んでいた本を片手に持ちながら再び女の姿を覗き見てその場にしゃがみ込み、必死にしがみつく女に問いかける。
「そっ、そうだけど! まだ、決心している最中だったのに、急にアンタが話しかけてくるから驚いて足踏み外してしまっただけよ! 正確にはまだ、自殺しようとしてないわ!これは、アンタのせいで死にそうになってるわけ! つまり、アンタのせいで死にそうになってるわけ! おわかり?! この人殺し!」
よく舌の回る女だ。
本当に何なんだ…この女は?
俺が人殺し…だと?
平和主義で夢はノーベル平和賞を受賞することだというこの俺が?
死ねばいいのに…
年増女なんか死ねばいいのに…ッ!!
これだから、成熟しきった女は嫌いなんだ。
「そうか…ならばこれで失礼する」
理不尽な物言いに頭にきてしまったので、その場から立ち去ろうと再び歩き始める。
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