憂鬱な女と変人な男

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  「ちょ、ちょっと…冗談でしょ!?」 「生憎、冗談は嫌いなんだ」 そもそも、死ぬ気だったのだがら好都合だろう。 それに… 「丁度、死後の世界の有無が気になっていたところだ…。 もし、霊体化に成功できたのなら何かメッセージをくれ」 「出来るかぁッ!!??」 「先人たちは、こんな言葉を残した…成せば成ると…」 「御託はいいから…っ…た、助けなさいよ…っ!」 それが、人にモノを頼む態度なのか…不躾な女だ。 それと、何より気に食わないのは…自分の命を簡単に投げ出そうとする愚かな考えだ。 しかし、状況的に助けねば要らぬ汚名を着せられかねん。 もう少し、この女に仕置きをしてやりたいところだが… 「…冗談もここまでか」 何事も冗談の最後には“オチ”が必要らしいからな。 ならば、俺もジャパニーズ“マンザイ”に則ってここは最後にオチを言うとしよう。 「…フッ。アメリカンジョークならぬ、ジャパニーズジョークだ女――」 そんなことを口にしながら女を助けようとまた柵を越えようとした時だった… 「……………ッ」 あれだけ強気だった女生徒の表情は、不安に駆られた表情に変わって声も震えていた。 本当に見捨てると思ったのであろう。 しばらくすると…声に泣き声が混じり、 「…ひぐっ、死にたくない…死にたくないよぉ…っ」 今度は、泣き出す女。 まったく感情の起伏が激しい奴だ。 「…誰か…たふけて…っ」 先ほどまであった威勢はどこに消えたのかと思わせる程に女は涙を流して助けを乞う。 本気だったわけではないが、度が過ぎた冗談は最早冗談に非ず…という訳か。 女は嫌いだが、それを見捨てるほど残忍な人間ではない。 突然の変わりように少しだけ呆れながらも身を乗り出して女に手を伸ばす。 「…オイ、俺の腕を掴め…早くしろ」 お仕置きのつもりが少し、冗談が過ぎたようだな。 たとえ、女であっても泣いている者を見捨てるほど…非情にはなれない。 「…びぐっ…ふぇ…?」 酷い顔だな…少しだけ心が傷む思いだ。 「…今日は、厄日だな」 せめて、これを依頼として扱い…この女から金を貰おう。 俺は、手を伸ばして泣きじゃくる女の手を掴みこう言った。 「依頼料、百円な?」と    
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