448人が本棚に入れています
本棚に追加
「疲れた…って、どういう意味だ?」
そんな理由で、屋上から飛び降り自殺しようとしたなんて正気の沙汰ではない。
いや、しかし…考え方は人それぞれだ。
俺個人でこの女の精神が異常だと判断するのはあまりにも危険だ。
この女は病んでるいるのか…もしくは痛い子なのは確かなのかもしれないが、心の病を患っている可能性もある。
だが、あんな危険な行為をした後でこの女の変わり様が異常なのは確かだ。
「…もしかして、ラリっているのか?」
「私さ、ほら? 何でもできるじゃない?」
っと思いきや、活き活きとした声で俺の問にも反応せずに語り始める。
こっちは自慢話なんか聞いてる暇なんかないんだがな。
「学園では、生徒会長で全校生徒の憧れじゃない?」
俺は、これぽっちも憧れてなんかいないがな。
「…俺は違うがな」
「それでね…って、何か言ったかしら?」
「…気にするな、続けろ」
女は電話やら何やら決まって長引かせてしまう生き物だと、義理の母親に教わったことがある。
「…まったく、迷惑な生き物だ」
「それで―――って…何か言ったかしら?」
「…いや、何でもない」
これ以上長引かせる訳にはいかない。
話の腰を折るのも何だ…暫くは適当に相づちを打ってやり過ごすしかあるまい。
あぁ…今日の六時半からスーパーでタイムセールだっという情報が入っていたな。
「オマケにお金持ちでこの学園の学園長の孫娘でしょ? つまり、皆から凄く期待されてるわけよ…わかる?」
何だ、あの髭爺の孫だったのか…この女。
てっきり、この女の妄想だと疑っていたのだがな。
そんな事より、もう日が沈んできているじゃないか。
アリス……は、怒っているに違いないな…俺がいなければ夕食の準備もできないからな。
育ち盛りの愛する妹よ…心苦しいが、もう少しだけ待っていてくれ。
「私は、必死でその期待に応えた…。その為に自分の意思を押し殺してでも皆が望む私自身を演じてきた。…ただ」
自分の心中を淡々と語り始める女の話に嫌々耳を傾ける。
正直、帰りたいのだが…その場の異様な空気に飲まれて口を開くことができなかった。
「…ただ、お父様に褒めてもらうために」
そう言うと…女は物悲しげな表情で空を見上げた。
心なしか…涙を流しながら
最初のコメントを投稿しよう!