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「…ただ、一言…褒めて欲しかった」
その場にしゃがみ込んで膝を抱えたまま、女は静かに泣き続ける。
「…そして、気づいてしまった。 父にとって…所詮、私は…会社を存続させる為の只の駒に過ぎないということが…」
正直、俺にとってはどうでもいいことなんだが…。
涙を流す女の姿に、お人好し気質が幸いしてか…良心が邪魔をする…。
「そんな父に失望した。…そんな父に愛想を尽かした母はまだ、幼い私を置いて突然家を出ていった…」
伏せていた顔を上げ、虚ろな表情で俺を見つめてくる。
「そんな母にも失望した。結局、私なんてどうでもいい存在でしかなかったんだと理解した」
何だか…こちらまで暗くなってくる話の内容だな。
「だから、幼いながら…私は父にだけには見捨てられないように父の望む忠実な娘を演じることにした…」
僅かに笑みをこぼし、自らを嘲笑っているようであった。
「…そんな、日々を過ごしていくうちに…私の中で、ある感情が芽生えた…」
「…それは、死にたい…そういった感情か?」
俺は、そう質問すると…女はまた、膝を抱えて泣き始める。
「…気づいたら屋上に来てた。 下校中の生徒達の楽しそうな光景を眺めていたら…今の自分が馬鹿らしくなった…っ」
「…ふむ」
「…急に頭が痛くなって、またその感情が溢れかえって…自分を抑えることができなかった…っ」
そこで、ベンチで横になってた俺が登場という訳か…間の悪い時に出くわしたモノだ。
まぁ、俺のおかげ?で…一人の年増女を救うことができた訳だからよしとしよう。
しかし…この女、病んでいるか何かか?
「…病んで―――そうかっ!」
「…ひぐっ…何なのよ…?」
「―――貴様、生理だな?」
俺は、膝を抱えて泣きじゃくっている女の肩に手を置いてそう言ってやった。
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