プロローグ

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     九条院学園高等部二年、生徒会長、九条院明日香。  それが、私の名前なんです。  学園では、全校生徒の憧れの的で何んだかよくは知らないけどファンクラブ…  …のようなモノが存在しているらしいんです。  そのせいもあってか告白なんて日常茶飯事…正直、参っているくらいなんです。  私の家は父が日本でも有名な九条院財閥の社長でもあり、祖父が趣味で始めたこの九条院学園の学園長の孫娘でもあります。  自分でいうのもあれだけど…私は普通の一般人より、裕福で何でも手に入る身分だと思ってます。  オマケに成績優秀でスタイル抜群…  自分で言っていて馬鹿みたいだと思いますが… “完璧”だと言っても過言ではないと思っています…多分。  全てが私が生まれた瞬間に手に入っていました。  幼い頃から英才教育を受け…父が望む通りの娘になるよう努力をしてきました。  父の命令には全て従い、全て完璧にやり遂げてきたんです。  最初は、私も楽しんでいた時期がありましたよ?  幼いながらも、自分が成長していくのが目に見える程に実感もできて、それに使用人たちも褒めてくれたから…余計に。  でも… 「お疲れ様です。 会長」  ひとり…物思いに耽っていると、すぐ側から声が掛かる。 「えぇ…お疲れ様、後は簡単な書類の整理だけだから貴方たちは帰っても結構よ」  いつものように、笑顔という偽りの仮面を被りながら他の生徒会メンバーにそう告げる。  私は、机にある書類を整えながら前を見据え…椅子を回して背を向けた。 「では、我々はこれで失礼致します」  その場で起立し、皆私に頭を下げてから次々と部屋から出て行く。  やっと、一人だけの時間がやって来た。 「…はぁ」  一人になった瞬間に、笑顔のまま一気に脱力し、机に突っ伏する。 「…今日も、いつも通りの完璧な私だったかな…」  いつもの様に、今日も私は私を演じきりました。  父が望む私を…。  完璧な私を。    
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