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――明日香サイド
「―――――ハッ!」
一瞬何が起きたのか分からなかった。
私の視線は去って行く男の後ろ姿を呆然と見つめていた。
気が付くと、あの変な男の姿は無く、既に薄暗くなった空が見える屋上に人だけ残されていた私の姿だけだった。
「…………ハァ」
憂鬱だった気分もあの変人のおかげで何処かへ消え去り、落ち着いて考えれば何て軽率な行動だったんだろうという自分に対して嫌悪感を感じる。
もし、あの時あの場所に私だけだけしか居なかったとしたら…今頃、屋上から落ちて死んでいたに違いない。
今頃になって足が震えてくる。
それと同時に死という恐怖感と生きているという安心感を感じる。
「…私、馬鹿だな…」
死ぬ勇気もないのに自殺して親の気を引こうだなんて…。
落ち込みながら自分が如何に愚かだということを思うとまた、気分が落ち込んでくる。
また、その場にしゃがみ込んで落ち込んでいると、階段を駆け上がってくる音が聞こえてきたと思いきや…
突然、出入り口用の扉がバンッ!と開いた。
「ふぇ~…お嬢様…ひっぐ、どこにいるんですかぁ~」
何故か、沢山の飴玉を持った小柄な少女が泣きべそかきながら現れた。
扉の向こうから現れた少女は私が最もよく知る人物であった。
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