お嬢な会長と朴念仁な変人

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  「………愛歌?」 彼女の名前は、芹沢愛歌。 私が、小学生だった頃だろうか。 お祖父様の御付きの使用人の孫娘で、私の六歳の誕生日だったろうか…その日に行われたパーティーでその御付きの使用人に紹介された。 最初は、その使用人のお爺さんの後ろに隠れながらペコペコと頭を下げていた。 その時の私は、父と母が離婚して精神的に不安定な状態もあってか、愛歌に見向きもしないで無視していたのだ。 だが…一人、会場のテラスで黄昏ていた私に、近づいて来て 「……お姉ちゃん…?」 「―――ブフゥッ!!??」 上目遣いでそう囁かれた私はある意味その時死んだのかもしれない。 今では、妹のように慕っている。 「…ふぇ?…お嬢…様…」 目尻に涙をいっぱいに溜めた状態で振り向き、安堵の表情を見せると 「お嬢ひゃぁぁみゃぁ~!」 持っていた飴玉を全て落として涙を流しながら私のところまで駆け寄ってきて、私目掛けて抱きついてきた。 「ちょ、ちょっと! どうしたのよ?」 「わだじ…わだじ、何か…もう…ふぇぁぁああ~!」 数分前の私だな…この子。 そういえば、知らない男の胸を借りてワンワン泣きじゃくってたんだけ…思い出したら何だか恥ずかしい~っ!! いや、そんなことより…愛歌をどうにかしなきゃ! 「アナタは、昔から本当に泣き虫ね? よしよし…」 さっきの私を見ているようで、何だが恥ずかしいのだが…どうでもよくなってくる。 この子を見ていると昔から不思議と癒やされてくるのだ。 「わだじ…いつまで経っても…ヒグッ…お嬢ひゃまが現れないでの…心配になって…ヒグッ…暗くて怖かったですけど…頑張って…ヒグッ…探して…ズズッ」 「あっ、そういえば…今日は校門前で待ち合わせだったわね。」 いつもは私が中等部の校舎まで迎えに行っているのですっかり忘れていたようだ。 この学園は高等部と中等部の校舎がそれぞれあり、中等部を卒業と同時に高等部に進級できるエスカレーター制なのである。 愛歌は中等部の三年生であり、不慣れな高等部の校舎の中を私の為に探し回ってくれたようだ。 「…ごめんなさいね。 心配してくれて…ありがとうね。」 抱きしめる力が少しだけ強くなる。 凄くこの子が愛しくなってしまった。 何故か私も涙ぐんでしまう。     
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