お嬢な会長と朴念仁な変人

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    「…まっ、愛歌? その男の名前と特徴を教えてくれないかしらっ!?」 彼女に気取られないように怒りを心の中に抑え込んで、その男の情報を聞き出す。 「…えっ? 名前と特徴ですか?」 「…ええ、悪いようにしないから、それにお礼もしないといけないでしょ?」 …ええ、勿論…制裁というお礼をね?  嫁入り前の…しかも、私の大事な愛歌に手を出したことを泣いて後悔させてやる。 「お名前は、分かりませんが…特徴を上げるなら…髪は少し長めの黒髪、顔は凛々しくて少し恐い雰囲気を漂わせる目つきですが…本当は優しさを秘めているような…えっと、一言で言えばお兄ちゃんみたいな人でした!」 「…お、お兄ちゃん?」 「はいっ! 私には兄弟がいないので、もし、私に兄がいたのならあんな感じなんだと思いました! あっ、でも、お嬢様は私のお姉ちゃんみたいな存在ですよ!」 ぴょんぴょん跳ねながら無邪気な笑顔で語り続ける。 愛歌の情報からしてその男を判別することは難しそうだが、…おのれぇ、私の愛歌をここまで籠絡するとは恐ろしい男だ。 でも、まぁ…愛歌を此処まで連れてきてくれたし、愛歌もあれだけ喜んでるみたいだし…悪い奴じゃないのかもしれない。 「今度お会いした際には私もキスの恩返しをしたいです!」 やっぱり、その男には消えてもらわなければならないようだ。 「だっ、駄目よ! 女の子が不用意にキスだなんて! お礼は私からしておくから! ねっ!?」 「そうですかぁ~? 残念です…」 納得がいかないようで残念そうな表情をするが、これも愛歌を守るため…致し方ない。 「そ、それより…もう、帰りましょう? もう夜だし、流石に疲れたわ…」 「そうですね! 早く帰らないとお化けが出てきて大変です!」 笑顔で子どものような事を言って手を握ってくる。 この子は本当に純粋で真っすぐな子だ。 この子がいれば寂しさなんてどこへ消えてしまう。 そんな彼女を慈愛の眼差しで見つめて手を握り返す。 「今日は久しぶりに一緒にお風呂に入って寝ましょうか?」 「本当ですかっ! やったですぅ!」 今日一番の笑顔で喜びを表す愛歌を見て笑うと改めてこの子は私が守ろうと決意し、その場を後にした。    
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