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「それにお前は子どもだしな。…子どもは嫌いじゃない」
今ではバカみたいに聞こえてくる…
まだ、小学生のガキだった俺が言えることじゃないとな。
「…兄妹は仲良くするものだと聞く。それと兄は妹を守り育てなければいけないらしい」
過去の俺は兄の役目がそういうものだと思っていたのだ。
ずっと一人っ子の身だったのだから仕方がない。
「だから、俺はお前を今のところは世界中で一番愛することにした」
俺の話に耳を傾けて無言のまま、見つめる。
いつの間にかあれだけ泣いていた姿は嘘のように消え失せていた。
ぼーっとしているアリスに近付き、肩をそっと掴み抱きしめるような形で不意を突いて頬にキスをしてやった。
「―――――――ッ!」
俺のした行動が予想外だったのか、一瞬体をビクつかせて抱きしめられている腕の中で硬直する。
「これは、お前の母親の国の挨拶プラス俺がお前に対する愛情の証しだ」
我ながらクサい台詞を言い終わった途端に、アリスの身体は震え始め、嗚咽を漏らし泣き出し始めた。
「…恐れることはない。何故なら俺はお前のお兄ちゃんなんだからな」
「……………っ」
「…寂しい時は、俺を呼べ。ずっと傍にいてやる…約束だ」
抱きしめる力を強くするとアリス自ら抱きしめ返し、俺の腕の中で声を押し殺しながら泣いていた。
「…これから、よろしく頼むぞ。…妹とよ」
俺は、それ以上は何も語らず…、アリスが泣き止むまで優しく頭を撫でながら抱きしめた。
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