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人を嫌うという行為が、そもそも苦手だ。どちらかというと、その先が怖い。
教室で、その手の話を聞くときいつも思うのは、その念の矛先が、自分に向いたときのことだった。
今現在いがみあっている生徒同士が、一ヶ月後には“親友”として、別の生徒の悪口を言っているなんてことは日常茶飯事で、時に雪はそんな級友たちに浅ましさすら感じることがある。
そんな反動もあるのかもしれない。雪は一度好意を抱いた対象には、どんな悪い面を見せられてもなかなか反感を抱けない。
だから、高杉のおかしな言動を目の当たりにしても、彼を決定的には嫌えない――。
「ちょっと、あれ!ほら――」
ざわり。騒がしい駅でも明白だった空気の変化に雪は無意識に顔をあげる。
ざわめきの理由はすぐに分かった。
「白銀学園…」
雪は一人ごちた。
真っ白なブレザーを着た集団。その制服を知らない高校生は、この国にはいない。
「白学も今日から修学旅行なんだ…」
「違うよ」
ぎょっとする。――隣に譲葉が居るのを忘れていた。
「違うの?」
「高等部二年の修学旅行はヴェネチア。あれは他の研修かな…――らしいよ」
後半、譲葉は急に言葉を濁した。
「なんでそんなこと知ってるの」
「らしいって話!知らないよ…!」
やけにむきになって否定する。雪が睨むと、そっぽを向いてしまった。
(もう……)
こうなった譲葉はもう、口を割らないことが分かっていた。雪は諦めて、視線を真っ白なブレザーの集団に戻す。
彼らは、恐ろしく目立った。そのブレザーのせいでもあるが、それ以上に彼ら自身の雰囲気のために。
私立白銀学園高等学校。付属の小、中学校も同様に、知らぬもののない名門・有名学校だ。
出る大会の首位を総なめにし、模試の上位者にもその名は連なる。卒業生には某大学の名誉教授だったり、プロのスポーツ選手だったり、ハリウッド女優だったり――。
誰もが一度は憧れるその学園。
そしてやはり、生徒の纏うオーラにも、圧倒されるものがある。
シワひとつない、ピシッと糊の効いた真白なブレザー、紺のプリーツスカート。モデルばりのスタイル、秀麗なその容姿。
誰もが声ひとつなく、その集団を見ていた。雪も例外ではない。
(これだけ注目されたら、嬉しいかな。……ウザイかな)
そんなことを思っていた時だった。
(え…――)
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