一章

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 その少女は白銀学園の制服に身を包み、同じ服を着た集団の中心にいた。  全ての音が何かに吸い込まれていくような感覚だった。全てが静まるのだ。振動さえ。  ――自分と彼女を除いて。  動けない。  心臓の音だけだ。それだけが、自分の存在を確認させた。無の境地。  真っ直ぐに雪を射抜く、雷光のような眼差し。精神さえ痺れて、その瞳に抗えない。  黒い黒い御髪、真珠の肌。夢で見たあの少女と寸分たがわぬその姿。  その、黄金の眼差し。  数分、或いは数秒にも満たない時間だったのかもしれない。  人形のようなその面がふいに綻ぶ。花開くようにという、まさにそうとしか形容しようのない動作だ。  ――少女は微笑んだ。  永遠にも思える瞬間だった。  「雪!」  譲葉が叫ぶのと同時に膝の力が抜けて、糸の切れた人形のようにかくんと膝が地についていた。  「どうしたの?!大丈夫?」  「あの子…」  ――いない。  「え?」  「あの髪の長い…女の子」  金の目の、と言いかけて、何故かそう言うことが出来ない。  彼女が立っていたはずの場所。その周囲。いない。それどころか、あれほど存在感を放っていた真白のブレザーの姿を、一人も見つけられない。  ――ぞっ、と鳥肌が立った。  「あの子だよ。…そっちじゃない、ゆず…ゆず――違うったら!」  全く検討違いの方向をキョロキョロする譲葉に、思わず大きな声をあげた。  譲葉が少し身構えたのが分かる。  「とりあえず立ちなよ」  「あの子…どこに…」  「雪、立って」  少し強めに言われて雪は立ち上がった。立ってからもう一度周囲を見渡して、溜め息をつく。  いない。  「どうしたの、ほんとに」  「夢で見た子と、すごく似てるひとがいたから…」  「…ふうん」  譲葉は一瞬、何かを考えるように黙り混む。  「―…じゃ、それも夢だったんじゃない?」  「はあ?!」  冗談じゃない、と否定しかけて、あながちそれができないので黙りこむしかない。  
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