42人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃあ、神話なんかにも興味あったりする?」
―――神話?
これには雪はきょとんとするしかなかった。
「神話?」
「そうだよ!」
高杉が大きな声を出した。まわりが気になって雪が周囲を見回すと、彼はじれったそうに身を乗り出した。
「榊原には分かるはずだ。そうでしょ?」
ますます困惑する。
「えっ…と…――うん。好き、かな」
嘘も嘘。全くの嘘っぱちだ。神話だなんて、子供用に作られた絵本でちょっと読んだくらい。本は好きだが、どちらかというとファンタジーは苦手で敬遠しがちだったということもある。
恋心に突き動かされて、とっさにでちゃった嘘だ。
しかし高杉は目の色を変えた。
「そうだと思った!」
思わずえっと声が出かかった。
手が。彼の手が私の手を掴んでいる。
雪の心臓が有り得ない速さでなりはじめた。なにこの状況有り得ない。
ちょっとちょっといきなりなんなのこの急展開は!
修学旅行恐るべし!
――なんて思ってる余裕は二秒もなかった。
「――痛っ…」
「やっぱり榊原がそうなんだろう」
「高杉くん、手…」
最初のコメントを投稿しよう!