一章

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 「じゃあ、神話なんかにも興味あったりする?」  ―――神話?  これには雪はきょとんとするしかなかった。  「神話?」  「そうだよ!」  高杉が大きな声を出した。まわりが気になって雪が周囲を見回すと、彼はじれったそうに身を乗り出した。  「榊原には分かるはずだ。そうでしょ?」  ますます困惑する。  「えっ…と…――うん。好き、かな」  嘘も嘘。全くの嘘っぱちだ。神話だなんて、子供用に作られた絵本でちょっと読んだくらい。本は好きだが、どちらかというとファンタジーは苦手で敬遠しがちだったということもある。  恋心に突き動かされて、とっさにでちゃった嘘だ。  しかし高杉は目の色を変えた。  「そうだと思った!」  思わずえっと声が出かかった。  手が。彼の手が私の手を掴んでいる。  雪の心臓が有り得ない速さでなりはじめた。なにこの状況有り得ない。  ちょっとちょっといきなりなんなのこの急展開は!  修学旅行恐るべし!  ――なんて思ってる余裕は二秒もなかった。  「――痛っ…」  「やっぱり榊原がそうなんだろう」  「高杉くん、手…」
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