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その日僕は、午前中に意味無く町を廻った後、公園の木陰にあるベンチに座って、走り回る子供達を眺めていた。 時刻は十三時をまわったところ、いつもなら空腹を訴えるお腹がやけに静かなのはきっと、いつもより遅めの時間に起きたせいだろう。 高校生である僕は本来この時間、学校で学業に勤しんでなければならないが、今日は休日……連休最後の日だから、こうして町を徘徊して、大してすることもなく時間を浪費している。 「こんにちは」 不意に声をかけられた。 清んだ綺麗な声だった。 声のした方向に顔を向けると、女の人がいた。 僕は驚いた、叔母さん以外の女性に声をかけられたのは何年振りだろう。 そして僕は更に彼女の容姿に驚く。 黒い髪、黒い瞳、輪とした顔立ち、外見は二十代前半……いや、もしかしたら高校生か? でも雰囲気は大人の女性を思わせて、同学年の女子に比べ身長も高いようだ。 なにより驚いたのは、まだ5月初めの……以前より少し暖かい位でしかない気温の中、彼女は真っ白な『ワンピース姿』でそこに居たことだ。 驚愕の色を隠せない僕に、彼女は続けて言った。 「隣、いいかな?」
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