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だが、その時間はそれ以上長く続かなかった。
ドドドと言う蹄の音と共に親方様と天空流派の兄弟子たちの姿が見えた。
おそらく生き残りを探しているのだろう。
「おい、逃げろ。」
俺は少女のそれだけ言った。
少女は頷くとそっと逃げようとしたが、兄弟子の一人がこちらに気づいた。
居たぞ!という掛け声とともに全員がこちらに向かってくる。
俺は前に出て、親方様と対峙した。
「ハグマ・・・」
「親方様・・」
「何故そこにいる? 後ろのいる娘はア・ジールの娘ではないのか?」
「何故そう思うのです?」
「金色の瞳と桃色の髪を持つのはア・ジールの娘だけだ。」
俺は唇を噛み、抜刀した。
「わしらを裏切るか?」
「それもやむを得ないというのなら。」
「それが貴様のやりたいことなのだな。」
親方様も剣を引き抜き俺と対峙した。
少女は後ろで不安そうにそれを見ていた。
俺と親方様はほぼ同時に切りかかった。
キィンという高い音が響き渡り火花が擦れた刀身から弾け飛ぶ
連撃の応酬で親方様は若干守りのペースに入っていた。
思い斬り力をこめ、刃を振るうがそれを防がれた。
一度互いに距離を取り、間合いを確かめた。
親方様は何かに頷くと切っ先を俺にまっすぐと向けた。
「思い出すぞ、ハグマ
お前はどの弟子よりも強い。
いまもだ。ここにいるお前の兄弟子は誰ひとりとしてお前には勝てんだろう。」
「おほめにあずかり光栄です。」
「堅苦しい挨拶は苦手と言った。」
親方様は切っ先を少しずらし、深いため息の後、小さくこう言った。
「殺したくはない。戻ってくる気はないか?」
「ありません。」
こう答えるのが、俺のプライドだったのだろう。
そして互いに接近し剣を振るった。
だが俺の剣は親方様に当たることなく、親方様の剣は俺の胸を十字に切り裂いた。
「ク・・ガハッ!」
俺は血反吐を吐き、その場に倒れこんだ。
他の兄弟子達が俺を押さえつける。
「悪いな、ハグマ。
お前の事は村に帰ってから決める。」
俺は何とか抜けだそうとするが二人に押さえられては何もできない。
残り二人の兄弟子が少女を捕えようとする。
俺は精いっぱい声を張り上げ、逃げろ!と叫んだが、足がすくんだのか少女は走りだすことなく捕まってしまった。
親方様はゆっくりと少女の歩を進め、剣を構えなおす
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