墜落現場

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軽く百人を越える自衛官の隊列が出来ているが、いつもの訓練のようにピリピリしたものではなく、どよどよとした喧騒に満ちた空気が流れていた。 高橋が隊列に入り終えた頃、基地の中から隊長の山下が駆けて来た。 隊長の山下は40代で顔に深い皺の刻まれた男だが、体格も良く、若者には負けていないといったオーラを外見のみで伝わせる男だ。 マイクを片手に隊列の前に陣取った。いつもの掘りの深い顔で指揮台に立った。 「あーあー。緊急に集まって貰って結構だ。既に知ってる者もいるが、欅灘市にジャンボ機が墜落した」 今日、何度も聞いた事を言う隊長に高橋は耳を痛くした。 「機内には輸送中の機密保持の薬品があると聞いている。まだ詳細は不明だが、感染、漏洩の危険もあるため、我々の仕事は防護服を着用しての薬品の捜索を命じられた。同時に回収にあたる」 辺りがざわめいた。 『機密薬品』と聞いた全員は、前後左右の自衛官に詳細を聞いてみる。 全員が全員「知らない」と口を揃え、情報は掴めなかった。
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