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*ー*ー*
(き、来てしまった…)
目の前にある扉のプレートには【図書室】と書かれている。
(どうしよう…)
「八尋=タツノミヤ」だと分かってから、一先ず図書室のことを仁先輩にどうしたらいいか相談しようと思って一度寮監室に行ってみた。
しかしドアには鍵がかかっており、中に入ることが出来なかった。
仕方なく僕は学校に戻って、今ここにいる。
いや、正確に言うなら教室やら彼方此方をうろうろとして無駄に時間を潰してから、というのが正しい。先延ばしにすればするほどどうすればいいか分からず、何度も寮に戻り寮監室を確認したが、三度確認した所で諦めて素直に図書室に来ることにしたのだ。
時間は午後18時40分。
放課後と言われたが授業が終わってから3時間過ぎてしまっている。
「べっ、別に?直ぐ来いとは言われてないしっ?」
扉に向かって言い訳をする。
誰も居ない廊下に自分の声だけが響いてとても虚しかった。
(………えーい!どうにでもなれっ!!)
勢いを付け、えい!と図書室の扉を一気に開けた。
図書室は、栗色と狐色を基調としたシックな内装で高さ3mはあるだろう書架がズラリと並んでいた。壁掛けのクラシカルな振り子時計がゆったりと時を告げる。最新のパソコンがずらりと並んでは居るものの、机や椅子の毛皮の色が落ち着いているからか調和していた。
教室4つ分くらいの図書室内をぐるぐる回って八尋を探すが全く姿が見えなかった。
「流石に帰っちゃったか、な?」
希望的予測に胸を落ち着かせた。
そうだ、八尋は生徒会だし、仕事も忙しいだろうから高が昨日会ったばっかりの僕のことなんか長時間待ってる筈ないよね。
そう納得して「仕方がない」ので寮に帰ろうと身を反転させる。
「遅い」
「うわぁぁああ!!」
目の前に不機嫌度MAXの八尋がいた。
眉間の皺を深く刻ませた八尋は腕を組んで、僕を上から見下ろしている。
黒壇の鋭い視線を感じながら僕は顔を上げられずに俯いていた。
ただ息も無意識のうちに止めていたらしく、苦しくなって重い溜息を吐くと、いきなり八尋は僕の手を掴んで歩き始めた。
「ど、どこ行くの?」
八尋は何も言わずにひたすら図書室の奥へ進む。
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