1.Pity is akin to love.

10/13
前へ
/30ページ
次へ
 イズナは軍医として危険なところでたくさん働いていたから、お金はたくさんあった。……でも、無駄づかいは絶対に許してくれなかった。  アーレイカムの1番通りに診療所を開いて、その2階に2人で住んだ。イズナはわたしを学校にも行かせてくれた。それまでは文字の読み書きと簡単な計算はできたけど、学校ではもっと色んな、新しいことを教えてくれた。学校で、たくさん友達も出来た。「イシツブテー」ってやったら、皆が笑ってくれた。  朝早く起きて、イズナを起こして、ご飯を食べて、学校に行って。でも、診療所を手伝おうとしてもさせてくれなかった。イズナはどうしても人手が要る時でも、わたしを頼らずに召喚術を使ってモンスターに色んなことをさせてた。仕方がないから友達と遊んだり、勉強したり、ご飯を作ったりしてた。  それから半年くらいが過ぎて、イズナと一緒に過ごす初めての冬が近づいてた頃。普段はそんなこと絶対ないのに、イズナが診療所をお休みにして、私を広い草原に連れて行ってくれた。 「……イズナ、どうしたの?こんな所まで連れてきて……」 「今日は何の日か、わかるか?」 「わかるよ。自分の誕生日だもん。でも、それでどうしたの?って」 「……目を瞑ってくれ」 「……キスなら、こんな所じゃなくってもいいのに……」 「いいから、目を瞑ってくれ」  アンは頭に疑問符を浮かべながら、ゆっくりと目を瞑った。草原を通り抜ける風がひんやりしていて、心地良い。  草を踏む音がして、アンの目の前で止まった。――ほら、やっぱりキスなんじゃない――そう思って、アンが唇を突き出す。そして――身体が、何かに持ち上げられて浮いた。 「わわわっ!?」  アンが慌てて目を開く。そこには、石で出来た動く像のようなモンスター。その背は小さく、アンの背と同じ程度しかない。石像は長い腕でアンの身体を軽々と持ち上げると、肩の上に乗せた。アンが姿勢を崩さないように、手を添えてくれた。 「ゴーレムだ。背が低い個体だから、乗って歩いても頭をぶつけることは無いだろう」 「えっ?えっと……?」 「誕生日プレゼントだよ」 「誕生日……プレゼント?」
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加