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イズナは軍医として危険なところでたくさん働いていたから、お金はたくさんあった。……でも、無駄づかいは絶対に許してくれなかった。
アーレイカムの1番通りに診療所を開いて、その2階に2人で住んだ。イズナはわたしを学校にも行かせてくれた。それまでは文字の読み書きと簡単な計算はできたけど、学校ではもっと色んな、新しいことを教えてくれた。学校で、たくさん友達も出来た。「イシツブテー」ってやったら、皆が笑ってくれた。
朝早く起きて、イズナを起こして、ご飯を食べて、学校に行って。でも、診療所を手伝おうとしてもさせてくれなかった。イズナはどうしても人手が要る時でも、わたしを頼らずに召喚術を使ってモンスターに色んなことをさせてた。仕方がないから友達と遊んだり、勉強したり、ご飯を作ったりしてた。
それから半年くらいが過ぎて、イズナと一緒に過ごす初めての冬が近づいてた頃。普段はそんなこと絶対ないのに、イズナが診療所をお休みにして、私を広い草原に連れて行ってくれた。
「……イズナ、どうしたの?こんな所まで連れてきて……」
「今日は何の日か、わかるか?」
「わかるよ。自分の誕生日だもん。でも、それでどうしたの?って」
「……目を瞑ってくれ」
「……キスなら、こんな所じゃなくってもいいのに……」
「いいから、目を瞑ってくれ」
アンは頭に疑問符を浮かべながら、ゆっくりと目を瞑った。草原を通り抜ける風がひんやりしていて、心地良い。
草を踏む音がして、アンの目の前で止まった。――ほら、やっぱりキスなんじゃない――そう思って、アンが唇を突き出す。そして――身体が、何かに持ち上げられて浮いた。
「わわわっ!?」
アンが慌てて目を開く。そこには、石で出来た動く像のようなモンスター。その背は小さく、アンの背と同じ程度しかない。石像は長い腕でアンの身体を軽々と持ち上げると、肩の上に乗せた。アンが姿勢を崩さないように、手を添えてくれた。
「ゴーレムだ。背が低い個体だから、乗って歩いても頭をぶつけることは無いだろう」
「えっ?えっと……?」
「誕生日プレゼントだよ」
「誕生日……プレゼント?」
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