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アンがゴーレムを見下ろす。これが、誕生日プレゼント?怪訝そうな表情でイズナの方に視線を戻す。
「“ゴーレム”をプレゼントしたんじゃない。お前の新しい脚だ」
「……!」
予想外のプレゼントに、驚きを隠せない。
「わたしの、新しい、あし……」
「そいつに命令してごらん」
「えっと……じゃあ、歩いて、みて」
ゴーレムが言葉を聞いたのか、ゆっくりと歩みを始めた。その足取りはお世辞にも素早いとはいえないが、それでもしっかりした歩みが、久しぶりの歩く感覚が、脳を揺らす。
もう、二度と歩けないと思っていたのに。そう思ってたのに。
「……っ、ひぐっ……ぐすっ……」
「……アン?」
「うあぁあああぁああぁぁぁぁあああああああああああああああっ!」
大粒の涙が目からこぼれた。止まらなかった。何かを察してくれたのか、ゴーレムは歩みを止めた。イズナがアンを抱き締める。
「これから、このゴーレムがお前の脚になる。もちろん、どこでも使える訳じゃないが……車いすじゃ歩けないような場所や、友達と一緒に歩いたり、訓練すれば走ることも出来るはずだ。お前は――もう、自由なんだ」
その一言で、糸が切れたように。
ただ、涙が止まらなかった。
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