1.Pity is akin to love.

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「――私は、物心がついた頃には既に両親が居なかった」  落ち着いたアンとイズナは、草原で横になって空を仰いでいた。ゴーレムは居なくなっていて、2人の手は繋がれていた。 「……うん?」 「伯父夫婦に引き取られて、そこで召喚術の勉強をしていた。子供特有の憧れ、みたいなものだな。その時はそれが格好良いと思っていたんだ。私は頭が悪くなかったから、伯父夫婦は医者になることを何度も勧めてきた。今思えば、優しい人達だったな」 「……うん」 「それで、丁度今のアンと同じくらいの歳の頃に、大きな地震が起きた。伯父は頭を強く打って、即死だった。私も石レンガに足を挟まれて、動けなくなった。死ぬと思った」 「うん……」 「救助された私は、医者に助けられて……脚はリハビリを経て元通りに動くようになった。それから医者になることを決意したんだ」  イズナが、ふうっと息を吐いた。アンが心配そうに、イズナの方を向く。 「だから、わたしの脚のこと、気にしてくれてたんだ」 「ああ。何としてでも助けたかった。……アンの脚を切断するしかないのは、解っていた。そうするしかなかった……」 「人は、神さまじゃないよ。できることには限界があるよ」 「ああ、それでも人は、神に憧れる」 「……イズナは、私にとっての神さまだよ」  驚いたように、イズナがアンの方を向いた。アンが微笑んだ。 「脚を切断してくれたことも、新しい脚をくれたことも、わたしはとっても嬉しいの。だから――」  アンが上体を起こして、自らの顔をイズナの顔に近づけていく。アンが目を瞑って、イズナが目を瞑って――唇と唇がそっと、触れた。 「ありがとう。私の神さま」
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