2.Flower except mine is red.

5/17
前へ
/30ページ
次へ
「……でも、ここから逃げる気はなさそうね」 「ああ、私は医者だからな」  イズナがそう言うと、紅茶を一口うまそうに飲んだ。アンが慌てたようにイズナの肩を掴む。 「ねえ、ちょっと待ってよ!じゃあイズナは魔法なんてファンタジーなこと、信じるの!?」 「それは信じてはいない」 「じゃあ、どうして!」 「アリスを、信じてるからだ」 「……!」  アンが、アリスの方をはっと見る。 「……名付け親には、とても見えないけど」 「56歳よ。なんならあたしの生まれた時のカルテ、見てみる?教会に保存してあるわ」 「ごっ……」 「うん?まだ60過ぎてなかったのか。若作りも大変だな」 「失礼ね、これでも薄化粧で済んでいるのよ?まだまだ20代で通せる自信があるわ」 「30が限界だな、昔より老けた」 「なんでそんな落ち着いていられるのよっ!」  アンが叫ぶ。イズナとアリスが同時にアンの方を見て、次にお互いに顔を見合わせた。 「……なんでそんなに取り乱してるんだ?」 「だって……イズナだって凄い召喚士なのに!」 「私自身はそうは思わないし、たとえばどんなに凄い召喚士でも、重病の患者を治せる訳じゃない。今のアリスの話で重要な点は3つだ」 「3つ……?」 「まず1つ、魔力とやらを有している者がここアーレイカムに現れた。2つ目、十字騎士団――通称、ルミナスクロスがここアーレイカムに少なくとも3日前には居た。3つ目、ヒストリア教会が動いている」 「十字騎士団なら、まだ滞在してる筈よ。少なくともレフトウィング隊はね」 「レフトウィングと言えば、革新派の連中だ。なぜ奴らがここに居る?ヒストリア教会がまず一番先に疑ってるのはここだろう」  言葉が途切れて、リビングに沈黙が訪れる。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加