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「……アンちゃんは、そんなことが聞きたい訳じゃないのよね」
アンは俯いたまま、椅子の背もたれに寄りかかる。ため息にも似た吐息がリビングに響いた。
「でもね、血が繋がってなくても、家族のことは心配なのよ」
「……家族……?」
「……アリスは、人前で年上扱いされるのが嫌いだと思ってたが」
「何を言ってるの?アンちゃんはもう家族でしょう?」
「そう、だな……。……アン。アリスは私の伯母さんなんだ」
「……!」
アンが顔を上げ、潤んだ目でイズナを睨んだ。といっても眼力はなく、今にも泣き出しそうな顔で、イズナをじっと睨んだ。
「イズナ、アンちゃんは蚊帳の外にされていたのが何よりも嫌だったのよ」
「……そう、なのか?……変に心配を、かけさせたくなかったんだが――うおっ!?」
ガタン!
アンが自分の椅子をはねのけて、イズナに飛び込んで抱き着いた。強くイズナの身体を抱きしめ、くぐもった嗚咽が聞こえた。
「要件は伝えたわ。じゃああたしはお土産買って帰ろっかなー。甘党のマギーの為にモンブランでも買ってあげようかなー」
そう言ってアリスがイスから立ち上がると、リビングの扉まで歩いてドアノブに手をかけた。慌ててイズナが引き留めようと、アンを抱きしめながら振り向く。
「おっ、おいちょっと――」
「紅茶、美味しかったわ。イズナ、あんまり女の子を泣かせちゃダメよ?」
「うっ……ぐすっ……イズナぁ……っ」
「うっ……」
イズナがアンの身体を抱き、頭を撫でてあやす。その様子を見てアリスが微笑むと、リビングから出て扉を閉めた。階段を下りる音がして、玄関扉を開ける音がした。
「悪かった、アン。今度からはきちんと全部話すよ」
「……嘘ついたらゴーレムで踏む」
「やめてください。……そんな嘘はつかないよ」
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