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「……理解できたか?」
「いいや、全くわかんねェな。魔法とどこが違うんだ?」
「そうだな……魔法と違うのは、きちんと理屈で説明できるってことだ」
ザックが唸る。言っていることは理解できなかったが、イズナが召喚術は別に不思議な現象でも何でもないぞ、と言いたがっていることだけは理解できた。
「なるほどねェ、それで先生も魔法ってェのは半信半疑な訳だ」
「無信全疑って言ってもいい。理論的にありえない」
そう言うとイズナがグラスを持ち、酒を飲み干した。ボトルを掴み、自分のグラスに酒を注ごうとしたその時、
ガシャン!
と、背後から何かが割れる音がした。酒場中の人間が振り向く。イズナとザックも振り向いた。
「あぁん?俺の酒が飲めねぇって言うのかよぉ~?」
「キッヒヒ、ほらお姉さん、僕らと楽しく飲もうよぉ」
「きゃっ……やっ……やめてください!」
ザックと比べると小柄だが、それでも一般人に比べれば大きな赤い顔の男が、おそらく町人であろう女性に絡みついていた。その横に、背の低い男がピエロのような笑い声をあげながら、机の上に座っている。床に割れた皿が散乱していた。
「ルミナスクロス……か」
イズナが呟く。騒ぐ2人の男の腰元には、豪華な装飾の剣が差されていた。「おい、あの剣って十字騎士団の……」「ルミナスクロス?なんでこんなところに……」酒場の中がざわつき始める。
「や、やめましょうよ……シグさんボマーさん、落ち着いて下さい、皆さん見てますよ」
「あぁん?いちいち他人の目を気にしちゃあ何もできねぇだろうが!」
「ぐっ……」
赤顔の大男が、止めに入った優男を弾き飛ばした。その男の腰にも同じ剣が差されている。それとほぼ同時に、イズナが立ち上がった。ザックがイズナの方を向く。
「……先生?」
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