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「キッヒヒ!なぁにおっさん、あんたも混ざりたいの?」
「ここはお前らが来る場所じゃない」
「……あぁ?おっさん!誰に口聞いてんのさッ!我命ずるは、破天の昇華――」
ガンッ!
背の低い男が何かの詠唱を終える前に、イズナはその顔をテーブルに叩きつけていた。言葉は止まり、背の低い男はがっくりと倒れた。
「てめェッ――」「フェンリル」
続けて赤顔の男が懐から大型の回転式拳銃を出してイズナに向けたが、イズナは振り向きざまにそれをどけるように手を振ると、拳銃の銃身が真っ二つに切れた。何が起こったのかわからず、男が自分の手元を見る。そしてやっと気付いたのかイズナの方を怒って向くと、身の入ったイズナの右ストレートが飛んできた。綺麗にひっくり返って、大男も動かなくなった。
一瞬、酒場が静かになった。――一瞬だけだった。
「うぉおおおお!すげえ!」「ヒューッ!最高だぜアンタ!」「やべぇ!クールだ!」
「……先生もようやるぜ」
その様子を見ていたザックが苦笑する。イズナが腰の抜けていた女性を立たせて、怪我はないか聞いた。幸い、手が皿の破片で少し切れているだけだった。赤顔に殴られていた、ルミナスクロスの剣を腰に差した若い男はどうすればいいかわからず、その場でおろおろしていた。
「あんたらの上官に文句が言いたい。こいつらを運ぶのを手伝ってもいい」
「へっ!?」
そうやっておろおろしている若い男に向かって、イズナがそう告げる。若い男は一瞬目をぱちくりさせると、床に転がる2人の男を見た。
「あ……そっか、運び出さなくちゃ……わかりました。けど、この2人の事は俺に任せてください。本部へ案内します」
「……先生、本気ですかい?」
ザックが心配そうにイズナに話しかけた。イズナは男2人を抱える若い男を横目に見て、ザックの方を向く。
「ルミナスクロスが何故ここに居るのか聞き出すチャンスだ。文句を言いたい訳じゃない」
「……本当、ようやるぜ先生……。騒ぐ奴らを見て、すぐ行動に移せる頭の早さにゃ脱帽だよ」
「それしか考えてなかっただけさ。じゃあまたな、破壊屋」
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