1.Pity is akin to love.

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 小柄な兵士が怒りに任せて背中の銃を手に取り、扉の前に出ると同時に銃を乱射する。小屋の外に居たのは、汚い恰好をした複数人の男たちだった。兵士が撃った銃弾は何人かに当たったようだが、銃声は間もなくおさまった。銃を撃ったことによる黒い煙がもうもうと立ち込める中、蜂の巣になった兵士が倒れた。  医者は身を翻し、机の上に置かれていたメスを手に取ろうとしたが、雪崩のように駆け込んできた汚い男たちが銃を構えるのを見て、途中で手を止めて両手を上げた。 「……戦場泥棒、か」 「おうおう、そのナリを見るにお医者サマじゃねぇか。こいつァ丁度いい、今このクソ野郎が撃った銃弾が運良く当たっちまって怪我した奴が居るんだ。そいつの治療をしてもらおうか」 「…………」  医者は黙って、じっと男たちを観察していた。首領らしき男が、痺れを切らして医者の胸ぐらを掴む。 「聞こえてんのか?あ?お医者サマよう」 「生憎だが、私は他人よりも自分の命の方が大切だ。――フェンリル。」 「あ?何言ってやが――がっ!」  突然、宙に現れた黒い穴から蒼い毛並みが特徴的な狼が現れ、首領らしき男の首を噛み千切った。解放された医者はさっとベッドの下へ滑り込む。 「ひっ……撃て!撃てェ!」  汚い男たちが慌てて銃を乱射する。黒い煙がいっそう立ち込める。視界が遮られ、医者と狼の姿は見えない。 「やったか!?」  煙の中から狼の爪が一閃、銃を鉄ごと切り裂く。 「ひっ――」「うわぁああッ!」「ぐああぁっ!」「ひゃあぁああ!」  銃を失った男のすぐ周りから阿鼻叫喚の声が届いてくる。銃弾が左脚に当たって、悲鳴を上げながら前のめりに倒れた。  少しして、銃声は完全に鳴り止んだ。薄まった煙の中から、白衣の医者が現れる。
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