1.Pity is akin to love.

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 脚が焼けるように、熱い。  火照った身体を冷ますための汗は熱を持って、体中から噴き出していく。  身体は、動かない。身体が石になってしまったかのように、動かない。重い。  でもダメ、動かなきゃ……また……ひどいこと、される……。 「……!…………!」  いやだ、助けて!だれか……わたしを助けて! 「……!…い!」  助けて……助けてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけて―― 「お…!おい!大丈夫か!」 「……っ!」  赤毛の少女が上半身をがばっと起こした。激しい運動をした後のように身体がだるい。息が切れ、心臓の高鳴りが収まらない。――ここはどこ?簡素なベッドに自分が寝ていたことに気付き、医者を見て、自分が助けられたのだと思い出す。 「あ……」 「まだ横になっていろ。術後で体力が落ちてるはずだ」 「う、うん……」  医者は少女のベッドから離れ、机の前の椅子に座った。大量に付箋の貼られている大きなノートをひとつ取ると、1ページずつめくり始める。  ランプに照らされていて部屋の中は明るいが、小さな窓の外は真っ暗になっている。5つあるベッドのうち、4つは空いているようだった。なるほど医者が使う部屋だけあって、今は清潔が保たれている。少女は辺りを見渡して、自分が白く簡素な服を着ていることに気が付いた。暖かかった。  初めて医者とた時はマスクをしていて、顔はよく見えなかった。後ろで結った黒髪に、金の双眸。年齢は20代くらいだろうか、精悍な顔つきで、どこか寂しげにも見える。体格は医者にしてはかなりしっかりしている。  紙をめくる音が止んで、医者が少女の方を向いた。 「名前は?」 「えっ……えっと……わたしは、アン。アニー・ミルウッド。……お医者さんは?」  医者がそう返されて、驚いたような表情を作る。赤毛の少女、アンが不思議そうに見つめ返して、医者は名乗り返す。 「……私はアイゼン・アルハザード。皆からはイズナと呼ばれている」 「すてきな名前。頭文字Aつながりね」 「……残念だが、私はレクシア人だから綴りはEizenだ。……質問に戻っても?」 「ああ、ごめんなさい。どうぞ」
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