1.Pity is akin to love.

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「アン。一緒に住まないか」  白く、清潔感の保たれている病室。その部屋の中はカーテンで仕切られた6つのベッドがあり、窓際のベッドにアンは座っていた。  イズナの突然の言葉に耳まで赤くなって、真っ赤なリンゴのようになっている。 「えっ……えええええっ!?」 「こら、病院では静かにしろ」 「あ……ごめんなさい。でも、いきなりどうして?」  イズナが口ごもる。窓の外を見て、頭をポリポリとかく。その様子を見て、アンがくすっと笑った。 「あら、もしかしてそれはプロポーズかしら?それとも、お母様に『お前も良い歳だから、早くお嫁を貰いなさい』と怒られたのかしら?ふふっ、イズナのことだから勉強に没頭してて、お嫁さんを貰い損ねたとかっ!」 「婚約者は居たが、死んだ。両親も居ない」 「……ごめんなさい」 「いや、いい。それに、子供に興味はない」 「こどっ……子供じゃないもん!わたしだってもう大人よ!」 「はいはい、大人は病室で騒がない。静かにしなさい」  子供扱いされたアンが、恨めしそうにぷうっと頬を膨らます。その様子を見て、イズナがくすっと笑った。 「なんとなく……そうだな、なんとなくっていうことにしておこう。それともアンは嫌か?」  アンは激しく首を横に振る。 「ううん。孤児院の子たちも好きだけど、みんなは家族だから」 「……そうか。実はな、ここから離れてアーレイカムに移り住もうと思ってるんだ。あそこは文化保護区だから今後戦争に巻き込まれることは無いし、道幅も広いからアンも動きやすいはずだ」 「うんっ!イズナと一緒なら、どこでもいい」 「私はどこでも良くないがな」 「むうーっ。ぜんぜんロマンチックじゃないっ!イズナの意地悪ぅぅぅ」 「なんとでも言え。アーレイカムに移ってからは、脚の調子は私が見よう。カルテの複製を貰ってくる」  こうして、わたしは退院してから、イズナと一緒にアーレイカム文化保護区に住むことになった。
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