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初老の女は、目覚めた私の手を握っていた。
私を見る目は優しく、明かに私への思いやりが感じられるのに、私は初老の女に対して何の感情も抱けなかった。
「あなたは誰?」
そう問いかけるよりも先に、初老の女の目尻から液体が流れ、右手はより一層強く握られる。
「……大丈夫。大丈夫やけん!」
泣きながら語りかける初老の女は、寝たままの私の体にすがりつき、しばらくそのまま泣き続けた。
何が一体大丈夫なのか。
だからあなたは誰なの?
声を出したい気持ちとは裏腹に、まるで声帯が無くなったかのように言葉がでなかった。
僅かに首を左手に向けると、白衣を着た中年男性と、スーツの男女が立っていた。
……病院?
脳が伸縮するように、頭痛がした。
私は気付いたらまた深い闇の中にいた。
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