プロローグ

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「可愛いなぁ」 うっすらと自分の姿が映し出されたガラス越しに、私は目を奪われる。 そこには、所々にピンク色の桜の花びらが散りばめられた淡いエメラルドグリーンのワンピースが飾られていた。 その色はとても鮮やかで、真っ白な背景の中、他のどの洋服達よりも映えて見える。 極めつけに、マネキンが履いている黄色のパンプスと、同じ色の革製の小型なショルダーバッグが見事にマッチしていて、思わずため息が漏れてしまった。 ここは私が密かに憧れを抱く有名ブランド“Sweet*time”のお店の前。 よく雑誌やテレビでも取り上げられていて、フェミニンな洋服が取り揃えてありティーンズ女子にとても人気がある。 値段はそこまで高くはなく、なんとか先月のお小遣いを切り詰めていけば、高校生の私でも手は届く範囲だ。 お店のショーウィンドウには他にも淡いピンクのフレアスカートや、白いレースがあしらわれたカーディガンが飾られていたが、やっぱり私は一際輝くワンピースに目がいってしまう。
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