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「あんたのお陰で目が覚めたんだ。だから、それについてはお礼を言おうと思って」
それから、暫しの間流れる妙な沈黙。
相変わらずの一触即発な空気に、益々不安が募る中、固唾を飲んで様子を眺める。
すると、俊君は深い溜息を吐いた途端、突然ゆう君の胸倉を勢いよく掴んできた。
まさか、本当に殴る気なのかと。
私は慌てて止めに入ろうとした矢先。
「いいか、よく覚えとけ。もし、また同じように加代を傷付けたら、その時は本気でお前から奪うぞ」
意外にも落ち着いた様子の俊君は、ドスの効いた声でそう言い放つと、ゆう君を睨み付けた。
「死んでもそうはさせない」
それに対し、ゆう君も負けない気迫で俊君を睨み返す。
またもや険悪なムードに包まれてしまい、私はどうすればいいのか分からず、その場で慌てふためく。
というか、まるで漫画みたいな台詞に、聞いているこっちが恥ずかしくなり、私は身を縮こまらせた。
それから程なくして、俊君はふと口元を緩ませると、ゆう君から手を離し、ゆう君もまた穏やかな表情へと戻る。
どうやら和解した様子に、ようやく緊張の糸が緩み、私はほっと胸を撫で下ろした。
「それじゃあ、帰るわ。加代、行くぞ」
「……は?」
そして、俊君は踵を返して私の腕を掴んだ瞬間、ゆう君は聞き捨てならないと言わんばかりに、眉間に皺を寄せる。
「だって、家が同じなんだから当然だろ?」
そんな彼を面白がるように、俊君は挑発した目でゆう君を一瞥すると、ぺろっと軽く舌を出してきた。
「あ、あの。ゆう君、今日はありがとう!また明日学校でねー」
私は半ば強引に引き摺られながら、ゆう君に手を振ってその場を離れる。
それを、まるで苦虫を噛み潰したような顔で終始眺めていたゆう君。
その狭間に立たされた私は複雑な心境になりながらも、ひとまず俊君の後に続いた。
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