2089人が本棚に入れています
本棚に追加
「その海斗ってやつモデルだったんだな。どうりでオーラが並外れていると思ったわ」
そして、ようやく口を開くと、納得したように、ゆう君は顎に手をあてて頷く。
「私がこうして変わることが出来たのも海斗さんのお陰なの。だから、すごく感謝してるんだ」
溢れるこの気持ちは、とても一言じゃ言い表せない。
だから、海斗さんがフランスに行くまでの間、これからも沢山感謝していこうと。
私は改めてそう感じながら、胸に手を当てた。
「確かに。俺もあれがきっかけで、本気で加代と向き合おうと思ったし」
すると、ぽつりと呟いたゆう君の思わぬ発言に、私は勢いよく顔を上げる。
「あの時はかなり衝撃を受けたよ。お前があまりにも綺麗だったから。それ以降、ずっと加代のことが頭から離れなかったんだ」
それから、気恥ずかしそうに胸の内を明かしてくれて、私は暫く開いた口が塞がらなかった。
まさか、ゆう君にそこまで思われていたなんて。
後からじわりじわりと込み上がってくる、感動とむず痒さに少しでも油断すると顔がにやけてしまう。
「……で、その撮影の時の写真持ってるんだろ。今度見せろよ」
暫く余韻に浸っていると、急にぶっこんだ要望を投げつけられ、私の意識は一気に現実へと引き戻された。
「それはダメ!恥ずかしいから絶対に嫌っ!」
いくら仕事とはいえ、海斗さんとの絡みをゆう君に見せるわけもいかず、必要以上に拒否してしまった私。
「何でだよ。別にいいだろ」
それが余計気に触れたのか。
ゆう君は眉間に皺を寄せながら尚も迫ってくる。
「それよりも、ゆう君はあの時何であそこにいたの?」
逃げ場を失いそうになる手前。
ふと浮かんだ疑問に、私は思いっきり話を逸らした。
最初のコメントを投稿しよう!