猿、出ず(さる、いず)

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男が刀を振り下ろす。 二人は、もう駄目だと目をつぶる。 その時、男の短い悲鳴と何かが落ちる音が聞こえた。 強い鉄の匂いが鼻を刺激し、二人は目を開けると男が血を流して倒れている。 春は、恐る恐る男に近づき顔を見た。 首には、深々とクナイが突き刺さっている。 「しっ、死んでる!」 春は尻餅をつくと、慌てて死体から距離をおく。 里美は、吐き気を耐え切れずに嘔吐してしまう。 それに気づいた春は、泣きそうになりながらも里美の背中をさする。 「里美、大丈夫?」 「ぜんぜん、大丈夫じゃないから!」 里美は、泣きながら春を叩く。 春は、里美の手を掴み落ち着くように言う。 「里美、落ち着いて! 早く此処から、逃げるの!」 「言われなくても、逃げるわよ!」 二人は、立ち上がると、手を繋ぎ空いてる手でキャリーバックを担ぎその場から立ち去ろうとする。 その時、里美の首に背後から鋭い何かが突き付けられた。 里美は、慌てて春を呼び止める。 「春、止まって!」 呼び止める声にただならぬ雰囲気を感じた春は、すぐに里美の方を見る。 里美の背後には、オレンジ色の髪をした迷彩柄のポンチョに身を包む猿飛佐助がいた。 「里美!」 「おっと! それ以上、動くな」 春が里美を助けようと、足を動かすと佐助は里美の首にクナイを食い込ませる。 里美は、恐怖のあまりガタガタと体を震わせた。 その姿を見た佐助は、呆れたような顔をした。 「ちょっと、いくらなんでもビビり過ぎじゃない? 男のくせに、情けないな」 「うっ、うるさい。 何が目的なの?」 里美は、奮えながらも背後にいる佐助を睨みながら聞く。 「んじゃ早速、質問。 お兄さん達は、何処かの忍?」 「違うわ。 道に迷って、ここに来ただけよ」 春が、佐助の質問に答えた。 すると、佐助は眉を寄せて春と里美を見る。 「さっきから気になってたけど、どうして女みたいな口調で喋ってるわけ? それと、念のため荷物を見せてもらおうか?」 二人は、佐助の指摘に自分達が男になっている事を忘れていた。 春は、慌てて男らしく喋る。 「こっ……怖くなると、女みたいな喋り方になるんだ。 荷物には、ふ……」 春は、荷物の中身を言おうとするが言葉に詰まる。 里美は、心配そうに春を見た。 「あのさ固まってないで、ちゃんと答えてくれる? 俺様、結構忙しいんだよね」 春は内心、答えていいのか迷っていた。
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