猿、出ず(さる、いず)

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里美は、きっと自分達がついに悲願のトリップをしている事に気づいている。 もし、本当にトリップしたならキャリーバックに入っている洋服が問題だ。 洋服が原因で、ザビー軍に組み込まれたら困る。 春が黙っていると、里美が突然口を開いた。 「荷物には、洋服が入ってる」 「洋服?」 荷物の中身を暴露した里美を、責めるように春は大声で言う。 「里美、なに考えてんの!」 「嘘ついても無駄なんだよ! 佐助を相手に、隠し事なんて意味ないよ!」 自棄になった里美は、佐助の名前を口走る。 佐助は、血が出るほど里美の首にクナイを突き立てた。 「ねぇ、どうして俺様の名前知ってるのさ?」 「この世界の事なら、分からない事なんてねぇんだよ! 腐女子、ナメんな!」 「なにするき?!」 里美は、首が切れるのも構わず佐助の顔面目掛けて肘を振りぬく。 突然の行動に驚いた佐助は、肘をかわすと距離をとる。 里美は、春の方をみて叫ぶ。 「春、レプリカ!」 佐助は、再び里美との距離を詰める。 春は、キャリーバックから突き出る日本刀のレプリカを掴むと里美に投げた。 里美は、佐助が距離を詰めるより先にレプリカを手にすると攻撃を受け止めた。 バリィンと割れる音が響き、二人の足元にレプリカの破片と血が落ちる。 「里美!」 「……刀、持ってたんだ。 注意深く見とくべきだったよ」 佐助の発言に春は、首を傾げた。 春が里美に投げたレプリカは、コスプレショップで買った偽物。 「里美、大丈夫?」 「大丈夫じゃない! どうして真剣、持ってるの?」 「知らないよ。 銃刀法違反してないからね!」 春は、慌てて法をおかしていないと主張する。 佐助は、眉間にシワを寄せるとクナイを里美の方へ強く押す。 里美は、佐助の力に押され上体が少しのけ反る。 「ちょっとっ……馬鹿力っ!」 苦しそうな声を出す里美に、春は木刀をキャリーバックから抜き取ると叫んだ。 「里美、イナバウワーしろ!」 「はぁっ?!」 里美は、驚きながらもイナバウワーをしようとするが後ろに倒れる。 その瞬間、里美の顔スレスレにキャリーバックが通過した。 佐助は、余裕でキャリーバックを避ける。 「お兄さん達、忍ナメてんの? ちゃんと質問に、答えてくれないかな?」 「話すし答えるから、武器しまって!」 春は、木刀を握りしめ里美の前に立ち佐助と対峙する。
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