甲斐の虎

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佐助に担がれて立ち去った後、ちょうど戦が終わっており城に直行するなり二人は牢屋の中にいた。 牢屋の中は、少し広い作りだが所々に染みがある。 佐助はというと、二人から荷物を取り上げて何処かに消えてしまっていた。 「里美、これからどうするの?」 「とりあえず、敵じゃないって主張しないと。 それより、傷は大丈夫?」 「平気。 里美は?」 春は、里美の首を心配そうに見る。 里美の首には、斜めに切り傷があり出血したせいで着物の衿が赤く染まっている。 里美は、自分の着物と春の着物を見た。 「ウチら、ボロボロだね」 「そうだね」 二人の着物は、血で汚れ春にいたっては着物が駄目になっている。 二人がしばらく無言でいると、佐助が木箱と着物を持って現れた。 「お兄さん達、とりあえず手当するよ」 佐助は、牢屋の中に入ると二人の手当をさっさと済ませる。 二人の傷は、見た目とは裏腹に浅いもので消毒だけで終わった。 「思ってたより、傷が浅いんだね。 治療も済んだし、着替えてくれる?」 佐助は、言いながら二人の縄を解くと着物を渡す。 「着物、お借りしていいんですか?」 「いいも何もおたくらの荷物見たら、ヒラヒラした南蛮の着物しなかないじゃない。 大将に会うのに、血生臭いままじゃ駄目でしょ」 「ですよね」 「んじゃ、お借りします」 申し訳なさそうに言う春に対して、里美はさっさと着替え始める。 佐助は、二人が着替え終わるのを壁に寄り掛かって待つ。 春も着替え始めると、佐助が声をかけた。 「ねぇ、お兄さん達が身につけてるレソなに?」 「えっ? ソレってなんですか?」 春は、着物を着る手を止めて逆に聞き返す。 すると佐助が、ボクサーパンツを指差す。 「あぁ、これは褌みたいな物ですけど」 「ふーん。 ずいぶん変わった褌だね」 「春、早く着替えな」 里美は着替え終わると、手が止まっている春を注意いする。 「あっ、ごめん」 春は、里美に謝ると急いで着替える。 里美は、佐助を見ると声をかけた。 「私達の荷物を調べたなら、何者か分かってるんじゃないの? 特に、名前ぐらいは」 「まぁね。 二人とも着替え終わったし、ついて来な」 佐助は、春が着替え終わるのを見ると牢屋から出てる。 二人は、顔を見合わせると佐助に続いて歩く。 牢屋を出ると、長い廊下を歩き続けとある一室に通された。
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