甲斐の虎

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部屋の中は、四方が襖に囲まれている。 二人は、中央に座らされると佐助が襖の奥にいる人物に声をかけた。 「大将、さっき報告した男達を連れて来たよ」 「うむ、入って参れ」 佐助は、入室の許可を得ると襖を開けて奥の部屋に入る。 二人は、どうしたら良いのか分からず動かない。 それに気づいた佐助が、二人に部屋に入るように言う。 「ちょっと、何してるのさ? 中に入りなよ」 佐助に促され、二人は中に入ると下座に座ろうとする。 すかさず、佐助が注意した。 「二人は、中央に座って」 「えっ? 大丈夫なんですか?」 「マジで?」 「いいから、座って」 二人は、渋々中央に座ると正面に座る武田信玄を見た。 信玄は、珍しそうに二人を見ている。 「佐助から話を聞いた。いくつか聞きたい事がある」 「すみません。 その前に、私の話を聞いて下さい」 里美は控え目に言うと、信玄はその申し出を了承する。 「よかろう。 話してみせい」 「ありがとうございます。 うまく説明できませんが、私達はこの世界の人間じゃありません」 里美の言葉を聞いて、信玄は首を傾げる。 「この世の者ではない?」 「信じられないでしょうけど、未来から来たんです」 春は、ため息混じりに言うと佐助が口を開く。 「まぁ、あの絡繰り見たらそんな感じするよね」 「えっ? 信じてくれるの?」 里美は、佐助に詰め寄る。 すると、佐助は懐から春の携帯を取り出した。 「あっ、私の携帯」 「この絡繰り、携帯って言うんだ。 これから突然、人の声が聞こえたから驚いたよ」 佐助の話を聞いていた信玄が、佐助に質問する。 「佐助、人の声がしたとは本当か?」 「本当だよ。 驚いて落としたら止まったけど」 落としたと聞いて、春は眉間にシワを寄せ心配そうに携帯を見る。 里美は、佐助に携帯を渡すように言う。 「ちょっと、携帯いい?」 「なにするき?」 「それ、人を攻撃する機能はないから」 佐助は、仕方なく里美に携帯を渡す。 里美は、携帯を開くと春を見た。 「春、携帯は無事だけど目覚ましつけっぱ」 「よかった」 春は、安心して胸を撫で下ろす。 「その携帯とやら、なにに使う物か教えてくれぬか?」 「これは、目に見えない電波って言うモノを使って遠くに居る人と会話をするための絡繰りなんです」 「それを作る事は可能か?」
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