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あの後、一通り話をすると信玄のご好意で一番風呂に入る事になった。
のだが、いざ風呂に入ると大きな五右衛門風呂が二人を出迎える。
二人は、戦国時代の現実にブチ当たりながらも風呂を堪能する事にした。
「当たり前だけど、シャンプーやリンスとか無いね」
「時代が違うと、こうも違うのか」
里美と春は、人生初の五右衛門風呂に浸かりながらしみじみと現実を噛み締める。
「ねぇ、そろそろ上がならない?」
里美は、顔をパタパタと手で扇ぎながら言う。
それを見た春は、頷いた。
「いいよ。 そういえば、里美って逆上せやすいよね」
「長風呂は、苦手なんだよね」
二人が、風呂から上がろうと五右衛門風呂の縁に手をかける。
その時、脱衣所と風呂場を仕切る戸が開くと茶髪をした青年あの真田幸村が入って来た。
「「「えっ?!」」」
三人は、声を揃えて固まるとお互いの顔を見る。
二人とも、女であれば悲鳴の一つ上げるのだが驚き過ぎて悲鳴が上がらない。
変わりに、幸村が大きな声を出した。
「もっ、申し訳ない! 某、てっきり誰もいないと思っておりました」
耳鳴りを起こすのではないかと心配するぐらい、幸村は大きな声で二人に謝る。
里美は、慌てて喋り出す。
「えっ? いや、あの、謝らないで下さい! というか、ごめんなさい!」
「いや、貴殿が謝る事はござらん! もとはと言えば某の責任であるが故」
ワタワタと謝る幸村と里美に、春が割って入る。
「ちょっと、すいません! 湯舟から出ずらいので、退室願います!」
「これは、誠に申し訳ない!」
幸村は、再び二人に謝ると直ぐさま退室する。
里美は、ぐったり湯舟の縁に頬を載せる。
「うわぁ、嫁にも婿にも行けないわ」
「まぁ、確かに嫁には行けないよ」
「春、先に出てよ」
春は、里美に言われるまでもなく先に湯舟から上がると脱衣所を確認する。
脱衣所には、幸村の姿はない。
春は、里美に手招きをする。
「誰もいないよ」
「そうと分かれば、早く着替えるぞ!」
里美は、すぐに湯舟から上がると体を拭き急いで着替えを済ませる。
春も里美に置いて行かれないように、急いで着替えた。
着替えを済ませた二人は、脱衣所を出ると真っ先に用意された部屋に向かう。
長い廊下を歩いていると、佐助に出くわした。
「あっ、猿飛さんだ」
春が名前を呼ぶと、佐助は立ち止まると里美を見て尋ねる。
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