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「香川の旦那、どうしたのさ? この世の終わり見たいな顔してるけど」
春は、苦笑いしながら佐助に先程の出来事を話す。
「湯浴みの最中に、人が来たのが原因なんです」
「なんだ、湯浴み見られただけなのね。 男なんだから、気にする事ないじゃない」
笑いながら言う佐助を、里美は睨む。
「恥ずかしいものは、恥ずかしいんだよ!」
「そんなに、怒らないでよ! あっ、湯浴みといえば二人とも風呂敷持ってかなかったでしょ?」
佐助の言葉に、二人は顔を見合わせ首を傾げた。
佐助は、苦笑いしながら言う。
「お風呂で使うやつ一式の事だよ」
「あぁ~。 持ってませんから」
「手ぬぐい使っただけだよね。 お風呂に湯舟と椅子しかなかったのは、そういうことか」
「いやいや、脱衣所にいろいろあったでしょ。 夜になった教えないと」
佐助は、頭を抱えながらため息混じりに言う。
「あっ、そうだ。 私達は、相部屋で大丈夫ですから」
春は、思い出した様に泊まらせてもらう部屋について話す。
すると、佐助は手を振る。
「ちゃんと一人、一部屋だよ。 でも、隣だから相部屋と変わらないか。 このまま真っ直ぐ行って右に曲がって奥の部屋二つが二人の部屋だから」
佐助は、二人に部屋の道筋を教えスタスタと立ち去ってしまった。
春は、佐助に向かって頭を下げた。
「ありがとうございました」
「隣なら、襖開けっ放しにしようよ」
里美は、春の手を引き歩きながら言う。
春は、里美の提案に二つ返事で了承した。
言われた道順に従い歩くと、奥の部屋に入る。
部屋の広さは、六畳で茶室にあるような掛け軸が飾られていた。
襖は、シンプルなものだが気品が漂う。
里美は、中に入るなり隣の部屋に続く襖を開けた。
「こっちも、似たような部屋なんだ。 一人には、けっこう広いね」
「里美は、どっちの部屋がいい?」
春も部屋に入ると、部屋の隅に自分達の荷物を発見しながら言う。
「開けっ放しにするから、適当で」
「了解。 里美、荷物ここにあるからね」
春は、部屋の隅の荷物を指差す。
里美は、ちらっと荷物を見るとため息をついた。
「あっても意味ない荷物だけどね」
「まぁ、そう言わないで。 あっ、マカロン!」
春は、ふと母から渡されたマカロンの存在を思い出した。
すると、慌ててバックを確認する。
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