一日

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幸村は、佐助に駆け寄ると二人を心配そうな顔で見る。 二人は、風魔がいなくなって安心したのかボーッとしている。 「二人とも、大丈夫でござるか?」 恐る恐る二人に声をかける幸村に、二人は首を左右に振って答えた。 そんな二人を見て、佐助は腕を組ながら考える。 「それにしても、風魔の狙いが分からないな。 念のため、二人に護衛をつけるか」 「俺も、賛成だ。 また、襲われるやもしれんからな」 「それじゃ、俺様は仕事に行って来るから二人をお願いね」 佐助は、ため息をつくと幸村の前に二人をつきだすと姿を消す。 すると、ようやく回復した春がその場に座り込んでしまう。 それに気づいた里美と幸村が、慌てて声をかける。 「ちょっ、春!? どうしたの?」 「笹木殿、如何なされた?!」 あわてふためく二人に、春は一言だけ言った。 「死ぬかと思ったよ」 春は、そう言うと自然と涙が溢れだし頬を濡らした。 突然、涙を流す春に幸村はワタワタと更に慌てる。 「笹木殿、どこか痛むのですか? もしや、怪我でも?!」 「いえ、ただ安心したら勝手に・・・。 ごめんなさい、大丈夫ですから」 無理矢理に笑顔をつくる春に、幸村が複雑な顔をする。 里美はそんな幸村にどうしたものかと悩むが、幸村が突然、春の両肩を掴んだ。 幸村の行動に、里美と春は驚く。 「無理に笑顔をつくる事は、ござらん。 泣きたい時は、泣いてもよいと某は思いまする」 春は、幸村の言葉に頷くと涙を拭き幸村を見る。 「心配かけて、すみません。 もう大丈夫です」 「春、本当に大丈夫?」 眉を寄せながら尋ね里美に、春は先ほどとは違い笑顔で答える。
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