一日

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「たしかにそうだけど・・・」 「じゃあ、決まり! 帰って来たら、稽古をつけてもらおう」 納得しきれない春に、里美は笑顔で言う。 そんな里美に押し負けて、春も笑顔で頷いた。 二人を見ていた幸村も、自然と笑顔になる。 「では、さっそく参りましょう」 「「はい」」 二人が、頷くと幸村が二人を先導する。 里美と春は、幸村に続いて歩き出した。 幸村が着替えてから、三人は城を出て城下町を歩いていた。 城下町は、人々の笑顔と活気に満ち溢れている。 春と里美は、キョロキョロ辺りを見回しながら幸村の隣を歩く。 そんな二人に、幸村は苦笑する。 「お二人とも、余所見は危ないでござる」 「うん」 「わかってます」 幸村の言葉に、返事するが珍しいと思う気持ちが強いせいかキョロキョロせずにはいられない。 しばらく歩いていると、幸村が二人を呼び止めた。 「お二人とも、甘味屋に着きました」 里美と春は、足を止めて幸村を見ると幸村は一軒の店を指差していた。 甘味屋は、とても繁盛しているようで店の前には行列ができている。 「うわぁ、混んでますね」 「すごい」 行列に驚く二人に、幸村は自慢気に言う。 「ここの甘味屋は、甲斐で評判でござる」 「旦那が自慢してどうするのさ」 聞きなれた声に三人が振り向くと、着物姿の佐助が立っていた。
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